ライターにいみのBlog

興味あることについて日々探求思考している水産系ライターのつぶやきです

排除構造物

11月28日に放送された、NHK『ドキュメント20min』の「“排除アート”?をたどって」の回(初回放送日2022年5月9日)。制作は名古屋放送局。

番組の放送を見て、大きなショックを受けました。

じつは今年、同じような光景を名古屋の都心部で見ていて、その異様な景観に心の中がざわついて、気持ちが乱れたことを思い出しました。そしてこの時、これがなにを意味するものか、すぐにわかりました。

主にホームレスが滞在できないようにすることを目的にしていると思われる、敵対的なデザイン。空き地にとがった石を並べたり、ベンチの真ん中に手すりを付けたり、座り心地のよくない硬い素材のイスを置いたり。こういうものを「排除アート」と呼ぶそうですが、このようなものはアートでもなんでもありません。アートに対する冒とくでしょう。私は「排除構造物」もしくは「排除デザイン」と呼ぶことにします。

いつ、だれが、なぜこのようなものを設置したのでしょう?

私の住んでいる町には、まさかないだろう。そう思って駅の周辺を歩いてみたら、いくつかの排除構造物と思われるものが見つかりました。こうしたものが、身近な環境にもあることを知り、驚きました。

「排除」ということでいえば、愛知県図書館の1階ロビーにあった、ゆったりと座れるイスもだいぶ前になくなりました。近所のスーパーの店内にあった、地元のお年寄りがよく使っていたベンチもいつの間にか消えていました。安らげる場所が、街からどんどん撤去され、失われています。

管理者が決めた目的のみの使用しか認めない。長時間の滞在を許さない。人を寄せ付けない。排除構造物からは、そのような意図が伝わってきます。弱者への寛容さを欠いた窮屈で息が詰まりそうな社会に、どんどん変容してしまっているように感じます。このような構造物の増加は、こうした世の中の変化に気づかない、または気づこうとしない、現代社会における人々の無関心・無責任と、どこかでつながっているような気がしてなりません。

名古屋の都心部で目に入った光景